トージシャ Studies ホウレンソウ

ー私が自分の人生の主人公になるー 問題を自分に引き受けたとき、人は当事者になれる。自分のニーズを掘り起こし、発信できる「当事者」になるために日々奮闘しているマインビーストのメンバーの日報です

現代秀歌十六選

てのひらに君のせましし桑の実のその一粒に重みのありて
皇后美智子

かの時に我がとらざりし分去(わかさ)れの片への道はいづこ行きけむ
皇后美智子(結婚後30数年経た時の歌)

ごろすけほう 心ほほけて ごろすけほう しんじついとしい ごろすけほう 
岡野弘彦

酔へば寂しがりやになる夫なりき偽名してかけ来し電話切れど危うし
大西民子

さらば像 さらば抹香鯨たち 酔いて歌えど 日は高きかも
佐佐木幸綱

月下独酌一杯一杯復(また)一杯 はるけき李白相期(あいき)さんかな

次々に走ります過ぎ行く自動車の運転手する人みなまえを向く
奥村晃作

信号の赤に対ひて自動車道は次々と生まれる前から順に
奥村晃作

団栗はまあるい実だよ樫の実は帽子があるよ大事なことだよ
小島ゆかり

うどん屋の饂飩の文字が混沌の文字になるまでを酔う
高瀬一誌

大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり
花山多佳子

椅子の上に丸くなりたる子の背(せな)はアラジンのランプと言うからこする
花山多佳子

終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
穂村弘

二日酔いの無念極まる僕のためもっと電車よ まじめに走れ
福島泰樹

洪水はある日海より至るべし断崖(きりぎし)に立つ電話ボックス
内藤明